新しい秩序の時代〜注43

公開: 2019年7月31日

更新: 2019年7月xx日

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43. 米国社会の反知性主義

2016年の米国大統領選挙では、民主党のヒラリー・クリントン議員と、共和党の企業経営者であったドナルド・トランプ氏が戦いました。この選挙では、一般の投票では獲得投票数でクリントン議員が勝ちましたが、大統領選挙人による選挙では、トランプ氏が勝利しました。つまり、選挙では多数を取らなかった候補が、選挙人の獲得数で上回り、選挙に勝ったという、米国の歴史にはなかった勝ち方で、大統領に指名されたわけです。この選挙で、トランプ氏は、従来の政治が、一部のエリート達の手に握られており、一般の白人男性の考える政治とは違った方向へ進んでいると主張しました。トランプ氏が攻撃した、エリート層とは、首都ワシントンを中心とした地域に集まっている、政府の職員、ジャーナリスト、大学や民間研究機関の専門家、上院・下院の議員と秘書、さらにロビィストと呼ばれる圧力団体を代表する関係者などです。一般の白人男性が考える政治とは、白人を優遇する政治であり、米国の繁栄を優先する政治であり、米国の立場を前面に出して各国との交渉にあたる米国第一主義の保守的な政治です。その基礎にあるのは、聖書の記述こそが真実であり、その記述に従って生きることが重要であるとする、特ににアメリカ合衆国の中央部分に多い「福音派」の思想です。トランプ氏は、ジャーナリズムは本当のことを報道しないとして、「フェークニュース」と言う言葉を使って、各報道機関を攻撃しました。このことから、最近では、自分が信じていることを真実として語る「ポストトゥルース」が社会的な問題として取り上げられるようになっています。これは、真実によらないで、自分たちの立場を正当化しようとするやり方で、本質的な問題解決ができない方法だからです。

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